小説。3

あらすじ。
僕は輔に相談してもらったものの、
ダメだし喰らって、完全に美月へ告白する気は失せていた。
だから僕は美月と友達としていようとも考えた。
こんなんじゃ、恋愛は進まないってことは分かってたけど。
それが一番無難なんじゃないかと考えた結果だったのだ。


 時は過ぎて、2月13日金曜日。
明日学校は休みだ。
男が何故か無駄に期待に胸を膨らませる日の前日。
まぁ、この男には全く縁がないのだが。
チョコを貰うのは、いつも母さんとばあちゃんからなのだ。
平凡なのか。いや、イケメンじゃないから、普通なのだろうか。
もちろん一部、チョコをもらえるうらやましいのもいる。
「俺、チョコ貰いすぎてさ、悪いけどちょっと貰ってくれん?」
と、マンガのように言って見たくもなる。
それはまぁ、女の子の気持ちを台無しにするようなことなのは百も承知だ。
勝ち組になれない奴はテンションがいつにも増して低くなる。
そんな、悲しい日のことだった。

 「よぅ。元気?」
この日に元気なわけがない。
話しかけてきたのは、美月だった。
「・・・・おう、元気だけど? ・・・元気なさそうに見えた?」
見栄を張って、”負け組じゃない”アピールをする。
「めっちゃみえたょぅ」
「まじでか。紫っぽいオーラが出てたか?」
「どっちかと言えばどす黒い感じのほうかな」
「おいおぃ、冗談だよな?」
いつのまにか、何が吹っ切れたか分からないのだけれど、自然な感じで話せるようになっていた。
この2ヶ月の間、考えに考えた結果だったのか。
美月が話しかけてくれたおかげなのか、自然に上手くいっていた。
こうしているのが幸せなのかもしれない。
「冗談○×※%△Ω、冗談じゃねぇだろ(笑)」
左には、凌輔という輔の友人がいた。
会話を邪魔してきたのはコイツだったのか。
こいつものすごく滑舌が悪いのは確か。現になんていってるのか聞き取れない。
「お前に言ってないぞ。古川さんにいってんだ」
「なぁ、凌輔、見えるよな?どうみても」
「おいおい、悪ノリには乗らなくても・・・・」
「やべぇーめっちゃ見える〜」
すごくふざけた感じで、
前田凌輔(まえだりょうすけ)という、太っててちょっとドジなやつ。
何言ってるか聞き取れないときが・・・じゃない、ほとんどだ。
「冗談だよ」
僕の肩を叩いて美月は言う。
彼女にはそんなつもり無いんだろうが、僕はすごく反応してしまう。
神経がどうかしてる・・・・じゃなくて、心か。
女の子に体を触られると、ドキッとするのは僕だけじゃないだろう。

 「・・・・でさ、本題なんだけど」
凌輔に話しているのか、僕に話しているのか。
判断するのに、3秒はかかっただろう。凌輔が返事をしなかったからだ。
「ん?、あぁ、僕か。凌輔かと思った」
「どう見てもそっち見てるだろ(笑)」
(僕が美月を凝視しろとでもいうのか、コイツ。絶対無理だよ。)
「・・・・で、なんだった?」
「明日なんだけど、家にいるかな?」
「いるって?出かけないかって事?」
「そう。どうなの?」
「明日は家にいるつもりだけど・・・・・何か用だった?」
「いやさ、チョコでもいるかなぁ?・・・・・とか思って」
(!!!!!なんですと?
チョコ?美月から!?うぉぉぉぉおォオオぉ!)
一気にテンションが上がる。これで負け組にならなくてもいいのだ。
「くれ。頼む。くいもんなら何でも」
横から凌輔が口を挟む。
何でこうもスパッといえるんだ。
凌輔は、場違いなのか、鈍感なのか、マイペースなのか。
ただの食いしん坊なのだろうか。
僕からは面と向かってチョコくれ、なんて言えないや。
それ”だけ”は、尊敬したいところである。
「大智は?」
「おぉ、うん、ぜひ」
「・・・よかった・・・」
「何か言った?」
「ううん、何でも」
「何時くらいにだ?」
「わかんないけど・・・どうだろぅ?6時くらいでいぃ?」
「それでよろしく頼むぜ」
「わかった、じゃ、家にいてね」
「おう。」
「大智は・・・・・?」
「・・・・その時間に頼むよ」
この2人が集まるとどうも会話に割り込めない。

 美月からチョコ、か。
義理かな。でも、とりあえずもらえるんだ。
どんなチョコだろうか?ハートの形をしてるんだろうか?
手作りだろうか?それとも買ってきたやつかな・・・?
いつものごとくこの男、妄想が膨らんでしまいすぎる。

 * * * * * * 

 待ちに待った2月14日。
確かこの日は雨だった。
しとしとと降り続ける雨。

昨日、美月からチョコをもらう約束をした。
と言うと何か変だから、美月からもらえる予定、といったほうがふさわしいだろう。

昼間はいつもの百倍近くつまらない時間をすごした。
いつ来るか分からないから、出かけてなんかいられない。
野末って言う友達が「よう、お前今暇?できたら一緒にあそぼうぜ」
って言ってきたけど、断った。
友人よ。許しておくれ。
これも女の子からチョコをもらうためなのだ。
そしてまた僕はパソコンをいじり始める。


 まだ昼か。
インスタントのラーメンをすすりながら、考える。
(どうやって受け取ろうかな・・・
なんて言えばいいかな・・・
普通に「ありがと、いただくよ」でいいのか?
いや、めったなもんじゃないから、
「ありがとうございます!たべさせて頂きます!!」
・・・・完全な変人だ。)
引かれてしまう。
やっぱあれかな、様子を伺うかな。
それが一番だろう。
と考えた。

 しかし、一向に美月は来る気配がなかった。
9時まで待った。
今日は家から一歩も外に出てない。
これでは不健康そのもの、いわゆるニートに近いのかもしれない。
「ほらあんたさ、ちょっと買い物行ってきてくれない?」
しかもこんな夜中に、母に買い物を頼まれた。
美月がくるかも、なんて親には恥ずかしくていえない。
まぁ、遅いし。
来ることもない。期待した俺がバカだったんだ。
うん。

  • もらえるはずないんだから-

「わかったけど、こんな遅い時間にどこ行けって言うの?」
「・・・・・・・」
家から10分程の距離のコンビニだった。
牛乳と、パンと、その他野菜を袋に入れて持って帰るのだがこれが
いつも以上に重い。
体を動かしていないせいなのか、チョコのないバレンタインをすごしたからか。
「何かつまらなかった1日だったなぁ」
3億円当たった夢を見たかのように、何ともいえない虚しさと、どことなく裏切られた気持ちでいた。
今日も、チョコは1つももらえず、
期待の夢の日は雨のごとく、儚く終わったのだった。

 * * * * * *

月曜日。
あれから休みを挟んでいるせいか、
疲れも取れたようで。
日曜は散々遊んでやった。
自転車のりまわしたり、カードやったり。
悩み続けているのを忘れて。

その日の、4時限目の放課の時だった。
美月が何ともいえない表情で近づいてきたのだ。
「あの・・・・・・・・・さぁ、」
「どうしたの?」
僕のほうから話しかけたのかって言うのは
はっきりとしないけど。
「いや、・・・・・・・、っと」
「・・・・・・・?」
「約束・・・・・・覚えて・・くれてたよね・・・・?」
「何か約束でもしたっけ? ・・・あ!カラオケ行く・・?と・・」
「土曜日!・・・・・・・いなかったでしょ・・・・・?」
突然、普段はおとなしい美月が大声をあげた。
これはまずい展開になりそうな・・・・予感がしたけど、話の流れが全く見えてこない。
確かに、土曜日に美月からチョコもらうって約束してもらった。
・・・え?でも来なかったのは美月じゃ?

顔色悪い美月。
いなかったという美月の言葉。
美月の来なかった土曜日。

「え?・・・家でずっとまってたけ・・・・・・・ど?」
「うそでしょ・・・・」
そういって美月は顔を手で覆い隠す。
「・・・・・・・ごめん、何言ってるかちょっとよくわかんないんだけど」
俺は・・?なにをした?

何かがあった。
彼女に何かが起きた。
きっと理由があって来れなかったんだよな。
そのことを謝っているのか・・・いや、どこからどう見ても違う。
「待っててって、言ったのに・・・・」
「ご、午前も午後も、ちゃんと家にいたよ?」
「3回(インターホン)おしたけど、出なかった。
 ・・ちょっと遅れちゃってさ、夜遅くになって、急いで家に行ったんだけど・・・・」

まさか・・・・・・・・・・・
嘘だろう?
こんな事って・・・・・・・・・・・

あの買い物に出かけたほんの30分間、美月は僕の家に来ていたと言うのか。
こんな夜遅くに、か弱い女の子が一人で。
しかし何で母さんが出なかったのか。
「いや、でもさ、・・・・・あんまり遅かったから、
美月が来ないんじゃないかと思って。買い物にちょっとでてったんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
美月はうつむきながら、黙って席を立つ。
いすを引く、低くて重い音が今でもよく脳の裏に残っている。
裏切っていたのは、俺だったのだ。

「(何で、分かってくれないの・・・・?)」

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サボりすぎですいません(汗
1週間更新なしでしたね(焦
ネタも大体出揃ったので、明日からは欠かさず更新しますね☆
さて、この3ですが、初め描いてたストーリーと逆の方向に行ってみました。
これで面白さが増すぜっ!と思いましたがまだ先は考えていないわけで・・・
「頑張ります。」
この一言に尽きますね。