小説。2

あらすじ?

僕は今中学1年の石崎大智。
男なのに、スポーツができず、顔もかっこよくない。
外見は、悪条件が揃ってしまった男だ。
そんな僕は、同じクラスの古川美月
(ふるかわみづき)に恋をしていた。
今の年代、顔が悪い=モテない
と考えている僕は、告白しても断られる事しか
考えれず、「好きです」の一言も言えなかった。
だが、彼女はいつも優しく接してくれて、
やはり諦めることができなかったので、友人の
輔(たすく)の助けを借りて、”好きです”
と言おうと決めたのだった。

 あれから1ヶ月と半分。
もう風も冷たく、物悲しい季節になっていた。
何も親展はない。
頑張って、言おうと努力した。
だが、僕は運動部の水泳部所属、美月は文化部の
美術部。
帰宅時間が違うので、授業後は会うことも話すことも、
姿を見ることすらできなかった。

時間が無かったのだ。
漫画のように、校舎裏に呼び出したり、
海・・・とかロマンチストみたいなこと言ってられるか。
学校を出る頃には空は既に紅く染まり、
家に帰る頃には月がはっきりと見えるようになっている。

そして次第に、不安もつのる。
一度決めたことは、絶対にやり通す主義だったが、
時間とともに、気は失せていたのかもしれない。
すでに、1ヶ月ほど前の自信は無くなっていた。
僕ならできる、僕ならできる・・・。
何度も自分に言い聞かせた。
それでも、告白なんてできる気にならなかった。
運動で言うスランプみたいなものだろうか。

 * * * * * * 

 いつものように、朝は輔の家まで迎えに行く。
僕の家から輔の家までは10分ほど、輔の家からは20分
で学校に着く距離だった。

真新しいアパートのインターホンを押すと、
いつもなら出てきてから輔は僕に「よっ!おはよ」
と声をかけてくれる。だが、今日に限っては違った。
ドアを開けたかと思うと、慌てて僕に飛び込んできたのだ。

「なぁ、お前さ、美月に告白するとか言ってたじゃん」
「うん、ええ、おぅ。そうだけど? 何だよ、いきなり。どうかしたのか?」
「残念だったな」
「・・・・・・?ん?」
「いいか、心して聞けよ」
にしても、なんだろう。
どちらにしても顔から見て嬉しくなさそうに見えて嬉しそうだ。
アパートの階段を下りると、足早になって僕に話す。
「ほら、俺と美月さ、同じ部活だもんで、一緒に暇つぶし程度に話しとったんだわぁ」
「うんうん」
「・・・えっとね、何だったっけな??
・・・・そうだ、で、部活の空き時間にキスの話になって」
(状況がまったくわからんぞ?)
「あぁ、それから本の話になったんだ」
(・・・普通は話の順序逆じゃないのか?)
その疑問が気になりすぎて抑えれず、僕は
「は?どうやったらキスの話から本の話に?」
と聞いた。キスの話になんてどうやって持ち込んだんだ。
うらやましい。
「まぁ、そこは置いとけ。」
一番気になるんだけど・・・・・・
自爆しそうだから触れないでおこうか。しょうがない。
「うん、で?続きは?」
「あいつBL本とか読むんだとよ。完全な腐女子じゃねぇか」
「びぃえるってなんじゃね」
「簡単に言うと、男と女じゃなくて、男と男でいろいろやる奴」
「うーんと、いけない分類に入りますよね?」
「決まってるだろ」
なんという返答の早さだっただろう。鼻で笑いながら輔は言った。
そんなことは別にどうでもいいじゃないか、と僕は思う。
人の趣味をどうこう言うつもりは全くない。
それが大ニュースって言う程のものなのか?
輔のことだからまだなにかあるとは思うんだが。
「なぁんだ、そんなこ・・」
「これだけなわけねぇだろ。こんなことじゃいちいちお前に言わねぇよ」
なんだろう?輔に話を引っ張るに引っ張られて、
もう黙っては聞いていられないくらい気持ちは高ぶっていた。
「じゃぁ、何なんだよ。じらさずに早く言ってくれよ」
「まぁそう焦るな。でさ、そのBL本の影響あってかあいつは男が
やりあってるのを見るほうが好きなんだとよ。
好きなのは女の子だけで、『俺は男に興味なんてねぇぞ』
って言ってたぜ?お前は男だろ?いまさらモノがついてないとか言うなよ?」
「要するに、みづ・・いや、古川さんは、そっち系にだけ興味があって、
3次元に興味はないと?」
「そういうことだ。さいなら。」
「まじかよ・・・・・・・・。でも決まった訳じゃないんだろ?」
「そうかもな」
こんな重い話を悠々と語っている輔はすごい。
あいつは、ただ僕をけなそうとしてるのか?
「あっ、・・そう、それから・・・・」
「まだあるのかよ」
「今のはちょっとした前置きってとこだ」
「ひでぇな」
「ちょっと不自然だったかもしれんけどさ、
『じゃ、男には興味ねぇんだったら大智とはどんな
関係だ?恋愛関係?まさかねぇ』
って軽くお前をバカにして言ったやったらさ、
『あぁ、あいつはな・・・・・・・
別にクラスメイトかそれ以下だけどぉ。
っていうか、恋愛とかまず興味ある訳ないじゃんっ?
確かにいいとこあるのかも知れないけどぅ。』
みたいなこと言ってたぞ。
その話題には触れちゃいけなかったのかな?
怒ってたっぽいな、顔が赤かったし。」
無駄に輔の演技が上手いのは、状況を鮮明には映しているものの、逆に
悲しくなってくる。目の前で悪口を言われてるみたいだ。

(美月から見たら俺なんて【話すほうのクラスメイト】って感じなんだな。
・・・・そうだな、まず恋愛なんてな。小学生の頃とは事情が違うわけだし。
考え方がおかしかったよ。)
そして、その話を聞いて、告白する気は消えて無くなった。
「男に興味ない」とか「あいつ」扱いだ。
こりゃ、お先真っ暗だ。
10回告ったら10回砕けそうなくらいの。
「ずいぶんと落ちこんどるな。やっぱ言わんけりゃ良かった?」
輔は笑いながら言う。あいつは何者だ。
「あぁ、まぁ、うん。あれだ。感謝するよ。
美月の気持ちを聞いてくれたわけだし。」

「くそっ・・・・・・・・・・・」

 * * * * * * 

 はぁ、僕はどうすれば良いんだろうか。
と、窓に映る自分を見て自分に問いかける。
輔は口が上手い。どうやったらそんなこと聞き出せるのか
不思議で不思議でたまらなかった。
分からない。
どうか、輔の作り話であってくれ。
冗談であって欲しい。
・・・・じゃぁ、逆の発想はどうだ?
美月を恋愛の対象としてみなけりゃいいんだ。
そういう事だよな・・・?
そうすれば、自分が苦しくなることも、
輔に迷惑かけることも、そしてなにより美月と自然な感じで話せるから。
こうして一緒に話せるだけでも幸せじゃないか。

  • 今のままでいいのかも知れない-

「なぁにやってんの?」
絶望しかけた僕に天使が舞い降りた。つかの間の休息・・・・
違う、逆に地獄への門が開かれた気がする。
そう、美月が話しかけたのだ。
「おぉ、びっくりした」
「ごめんごめん」
「・・・で、何か僕に用だった?」
「そうだ、ねぇ、良かったらさ、
今度ってか明日なんだけど、カラオケ行かない?
おまえ歌うまいじゃん?だからさ。良かったら、でいいんだけど。
・・・あ、そうだ、野末とかもいるんだ」

野末は違うクラスなのだがこいつは幼稚園からの幼なじみだ。
器が広いせいか、ジュース1本くらい軽くおごってくれる。
噂では結構モテてるらしい。
その日は、土曜日だったのだが、部活で予定が埋まっていた。
((確か12月の20日あたりだったと思う))
「あぁ、その日さ、悪いんだけど・・・
「!!」
「ごめん、部活があって・・・・。悪い、また誘ってよ」
一瞬、美月の表情が悲しく見えたのは、
気のせいだったのだろうか。
そのときは、僕は何も思わなかった。
「うん、こっちこそごめんね?これなくてざんねんだ・・・・ぉ
じゃない、残念だね。」

何か言ったか・・・?聞き取れなかった。
何かが変だ。僕が変だ。ちょっと声が棒読みすぎた。
自然体ならこんなことはないのになぁ。
せっかくの美月とのデート・・・
違う違う、何の妄想が出てくるんだよ)
遊べる日なのに。僕も残念だよ。

「うん・・・・またな」

「なんか最近だいちゃんへんだよなぁ・・・・」

* * * * * * 

 家に帰る。
今日は終業式だったから、冬の宿題も沢山出された。

今日のうちに終わらせる予定だった。
が、そうもいかない。宿題の量が異常に増えている。
・・・そうだ。年賀状も書かなくては。
誰にだそうな?はがき代と時間とお金も限られてる。

とりあえず美月には、絶対に出そう。
あたふたして男子にしか出さなかった、小学生の頃とは訳が違う。
何を書こうかな、と言っても、絵は上手くない。
かといって、パソコンで作っちゃうのも手抜きだからどうしても自分の手で描きたかったのだ。
唯一できそうな事といえば、模写くらいだ。
美月はジャンプ連載のREBORN!が好きだったな。
キャラ設定が好きらしい。
僕も、アニメは最初から見ている。
それを描こう。かわいい画像あるかな、と、パソコンを点けてみる。

 はぁ、何故。僕は何をしている。
告白するはずだった。
なのに。
まだ恐れている。
いつも話しているせいか、逆に僕は何かが怖かった。
変に告白して、嫌われたらまずい。
話さなくなる・・・そんなことは避けたい。

でも、だからと言って、告白していない。

もし、もし、わずかな可能性で。
本当、0,000001%くらいで、OKって言ってもらえたら。
付き合ってから何すればいいかわからなかったからだ。
美月が、紛れもなく好きだ。
でも、彼女に何すれば言いか、どうすれば「一緒にいれてたのしいよ」と言ってもらえるか。
彼女を、守れる自信があるか。
僕は力が弱いから、美月を変な奴から守れるような自信は無かった。
起こることない心配してもしょうがないんだけど、もし・・・ね。

そして、美月は一緒におしゃべりする存在。
誰だって、近くにいた存在がいなくなるのは怖いものだ。
別れほど、つらいものはないだろう。
僕はその時こんな気持ちでいた。

マウスをスクロールしていくと、デフォルメされたキャラ画像があった。
おっ、これにするか。

 翌日、付き合ってからのことで気になって輔に相談に乗ってもらった。
「もしもし、たすく君は・・・」
「おう、何か用か」
「いや、どうしても気になる事があって」
「おう、なんだぃ?恋のお悩みかい?」
「おぅ、まぁ・・・・そんなところかな。たとえばさ、もし美月と付き合えたらさ、具体的に何すればいいの?すごい不安なんだけど」
「なんだろうね?だってまださ、中学生なんて興味本位の恋愛だろ?
そんな深く気にする必要ないって。具体的にあっちなことするわけでもないし
別にお前がそんなこと気にしなくても」
「まぁ、そうだな、ありがと」
「無理は承知でがんばれ」
最後の一言、余分だった気がする。

 * * * * *

1月1日、元旦。
鳴り響く鐘の音は、広い夜空にこだまする。
それと共に、年が変わる。
早いなぁ、もう正月か。と思っていたに違いない。
僕は毎年家族と一緒に神社にお参りに行くのだが、
今年、いや、去年か。
お寺に行くまでの道中、すごくさびしかった。
周りではいろんな家族が楽しそうに話してたのだが、
僕は一人ポツン、と。

隣に美月がいてくれたらなぁ、
一緒に賽銭を投げれたらなぁ、と
何度思ったことだろうか。

さびしい。

去年までは、「家族が幸せにいられますように」とか
そんなことを願っていたのだが、今年は違う。
5円玉を手に取り、投げ入れる。
「ずっと美月と一緒にいられますように・・・・・」
神聖な建造物の前でこんなこと言うのは恥ずかしかったが、
まぁこんなもんでいいだろうか。
自分のために願いを唱えたのは、初めてだ。
果たしてこの願いは、叶ってくれるのだろうか。
3へ続く。

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前作に比べると少し短い気がします(汗
書き方、少しは成長したかな?